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九条の映画館で

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「清作の妻」(増村保造監督1965年大映)を観ました。

(以下、ネタバレです)

貧乏ゆえに老商人の妾となった女は、老人の死後、故郷の村に戻ってきます。女は若尾文子。

そこに模範表彰をうけた清作という男が軍務から帰還します。自分で誂えた鐘を持ち帰り、村の高所に吊るして、軍隊生活のときのように、毎朝、得意げに打ち鳴らします。男は田村高廣。

村の英雄である田村が、こともあろうに村八分の若尾に惚れ(それはなんといってもあまりに魅力的ですから)、まわりの反対を押し切って一緒になります。

石を投げられて生きる二人。

戦時下となり、ふたたびお国のために出征しようとする夫ですが、戦地にやりたくない妻は田村の目を五寸釘で潰します。

「お国のため」という時代の狂信に恋愛至上主義が真っ向挑みます。

田村はかつて自ら吊るした鐘を叩き落とします。盲目となることで目が啓いたのです。

私はバッドエンドの映画が嫌いではないのですが、この映画についてはハッピーエンドを期待しました。

主役を演じた二人の俳優が映画の世界観をすばらしく演じています。

この作品は日本映画の傑作だと思いました。
by koyu320 | 2014-09-23 21:52 | 映画