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オンフルール(12)ボードレール通り

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もはや現存しないことは分かっていたので、どうしてもというわけではなかったのですが、
できれば訪れてみたいと思っていたのが、ボードレールの母親が住んでいた別荘です。

義父のジョルジュ・オーピック将軍(のちに大使)がオンフルールに購入し、夫の死後、パリから妻カロリーヌがここに移り住んでいました。

詩人はこの家を「玩具荘」と呼び、晩年、苦難ばかりが彼をさいなむ首都から逃れるように、いくどもこの母の家に足を運び、ときにしばらく滞在し、いくつかの作品を執筆しています。

彼に用意された二階の一室からは、旧港と海、立ち並ぶ木組家屋の連なりを一望できたそうです。

散文詩「港」に詩人の心の中をかいま見ることができます。

Un port est un séjour charmant pour une âme fatiguée des luttes de la vie. (Le Port)
(港は生きることの戦いに疲労した者の心にとって魅力ある滞在の場所である「港」『パリの憂鬱』)

ブーダンやサティと比べると、町との縁ははるかに薄いボードレールなので、たぶんダメだろうなと思いつつ、ホテルのマダムにいちおう場所を尋ねてみたところ、もちろん知ってるわ、と地図をひろげて丁寧におしえてくれました。

散歩がてら歩けば賑わいのあるところから遠くありません。

高い塀があって、別荘の跡地そのものを見ることはできません。詩人の名の入ったプレートがあるだけです。

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奥の門扉の先は海(セーヌ河口)です。
by koyu320 | 2009-10-25 08:08 |